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続・社会学入門

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(2020/10/20updated)
 先月は、岩波新書赤版『社会学入門』の、第1章・第2章に触れさせていただきました。
 今回は、しばらく個人的には難解に感じていた序章と巻末の部分に踏み込みます。

 社会学ならではの、ドイツ語の耳慣れない用語も多々出てくるのですが、関連する問題意識をすでにお持ちの方であれば、理解は難しくありませんし、そうでなくても、本書の丁寧な文脈に沿っていけば、理解も難しくはないかと思います。
 見田氏のいうところの、社会構造の4つの形態については、今回のブログでも記しておきたいと思います。
 
 ちなみに、本書での論旨は個人的には、カントの純粋理性批判で示された先験的な判断力の論旨にも通じていると思われ、社会学の分野でありながら哲学史の文脈上にも据えられる内容かと思います。 好きな人にはたまらない論旨を扱えそうです。
 そんなブログに読んで頂く方がいることを嬉しく思います。祝🌟

 はじめに、ゲマインシャフト、についてはご存知ですか?

 僕もそうでしたが、初めて耳にした人の為に、独社会学者、フェルデナンド・テンニース(1855~1936)の提唱した社会形態の分類のための用語を確認します。 ゲマインシャフトと、その対概念となるゲゼルシャフトです。

 ・ゲマインシャフト:地縁・血縁・友情で結びつく社会(非打算的…テンニースのいう本質意思による社会)
 ・ゲゼルシャフト :共同体の利害調整のため、人々が構築した社会(実利的…テンニースのいう選択意思による社会)

 を意味する言葉です。

 ゲゼルシャフトの社会では、利害調整のために人々は社会を設計します。なので、この社会では、明確な価値の対象を判断の基準にしやすいです。

 ところで、この二分類を表明した当時のテンニースの論旨は影響力を持ちましたが、同時に、批判の対象にもなりました。
 岩波文庫
から翻訳本を著した杉之原さんでさえ、
「社会的事象を社会構造の変化及びその規定因素との関連において把握するということがほとんど顧慮されていない」と言います。(吉田浩、2003『フェルデナンド・テンニエス』、東信堂

 というのも、テンニースはゲマインシャフトゲゼルシャフトの二つの領域を、さらに、生理的なものと、経験的なものと、思考的なものの、3段階の区分けを設けて、詳細な分類を試みるのですが、添付画像にあるように、生理的な段階では、男性はゲゼルシャフト的・女性はゲマインシャフト的で、思考的な段階では、それぞれ、庶民的・教養的だと示すような部分などもあり、批判の対象となりやすい論旨を含んでいたのも、批判の一つだと思われます。

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 というわけで、ここまでを確認しつつ、見田氏の見解を見てみます。


 見田氏は、テンニースの示した非打算的社会=ゲマインシャフトと、実利的社会=ゲゼルシャフトの区分けを採用せず、むしろ、ひな形として扱い、前者を共同態、後者を社会態として扱いました。
 そして、もうひとつ意思の有無(濃淡)の軸を設けて、4つの社会構造を提示して、現代の様々な社会状態を網羅する分類を示しました。

 

 見田氏の言葉を用いれば

1. 意思的な共同態   ... 交響体 ... 意識や意思によって人格的に繋がる集団
2. 意思以前的な共同態 ... 共同体 ... 地縁、血縁、友情によって人格的に繋がる集団(家族、同僚、農村共同体)
3. 意思的な社会態   ... 連合体 ... 相互利益とそれらを維持する秩序を構築して集う集団(会社、団体)
4. 意思以前的な社会態 ... 集列体 ... 相互利益に生きる人々の相補的に繋がる社会(損得勘定を基にした集い)

の分類です。さて、この4つの分類、なぜそうする必要があるのでしょうか。

  一つは、先述した、哲学の文脈上にある、物事に血を通わせる直観などの価値とその価値を共有しようとする集団が、意思のある共同態(非打算的)、見田氏の言うところの、交響体の集団に反映されている点です。

 面白そうです。

1.2の共同態=ゲマインシャフト
3.4の社会態=ゲゼルシャフト

 

 交響体は、解りづらいかもしれず、私なりに捕捉するとこう言えるかもしれません。

 交響体というのは、見田氏のいう「意思」的な共同態です。
 共同態とは、ゲマインシャフトを基にする集団で、意味するところは、地縁・血縁など、「本質意志」で繋がる集団でした。

 なので、交響体の構成員は、自発的に行動する、という特徴があります。

 ところで、これは、すごく不思議な特徴があります。この点に触れて、捕捉を終わります。

 というのは、多くの場合、趣味の集いやある意識の繋がりから交響体が形成されても、体制の維持が難しいという特徴があるからです。

 なぜなら、仮に交響体が形成されても、成員同士は、物理的な身近さによって生じる縁etc.の集団=共同体に変容しやすいですし、組織を運営するために権力構造を有する集団=連合体(相互利益に基づく関係性)に、変容しやすいからです。

 交響体の成員は、うまく形容し難い、研究者や芸術家や、よほどの才能のある人々など、利益ではない繋がりを維持できる自発的な集団ということになります。

 ちなみに、テンニースは、Gekehrten=Republik(学者共和国)という領域を、構想しました。

 という訳で、雑駁ながら、上記が交響体の捕捉でした。

 一方、集列体や、連合体の違いなども、解りづらいかもしれないので、それもまた説明できると嬉しいです。見田氏は、共同体も交響体も、集列体や連合体に含まれるとバランスが良い、との旨を記しており、現にそのようにシステムを社会は作り出しているそうです。

 今後、機会があれば、また続きを描くことにして、ひとまず、今日はここまでにしたいと思います。

社会学入門―人間と社会の未来 (岩波新書)

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ゲマインシャフトとゲゼルシャフト―純粋社会学の基本概念〈上〉 (岩波文庫)

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