(2017.1.11 加筆)
新年あけましておめでとうございます。
仏、歴史学者エマニュエル・トッドが著書の中で、面白いこと言ってました。
「自国通貨を切下げられないこと」が、EU連合の破綻の主な原因なのだと。そして、日本の金融政策を引き合いに出して評価してました。
どういうことか。
なし崩れ傾向にある今のEU問題を、ヨーロッパ統合の理念の問題や、ポピュリズム台頭の問題として焦点を当てるのでなく、加盟国が通貨切り下げ能力を失った、という銀行の仕組みに焦点を当てます。
ここでは、成功例として対照的な、第二次安倍政権をある程度評価します。ちなみに、2012年12月26日発足当時、70円代だった円は2017年1月、現在110円代後半となり、株価は2倍、貿易収支にとってはプラスに働いています。
実際のところ肝心の、労働者賃金の中央値も、物価も上がっていないので、トッドさんの本心はわからないですが。
ひとまずアベノミクスを説明するのに用いられてきた言葉、トリクルダウン、三本の矢、成長戦略などに変えて、トッド氏はこの政権の政策を「円切下げ政策」という一言で語ります。
枝葉末節した捉え方で、気持ちいいです。
ちなみに、EUではギリシャの財政破綻が話題になりましたけど、観光立国であるギリシャが自国通貨ドラクマを発行できなくなった結果、財政難に瀕したときに通貨安の恩恵を受けられず、観光客を誘致できなくなり、財政難に拍車をかけた、という事実を見れば、わかりやすいです。
(もしドラクマのままだったら、財政難に直面したときに、今の日本のように通貨の流通量を多くして、自国通貨安を招くことができました。すると債務は膨らむけれど、その分、割安になる観光業が活性化して、国外からのインバウンドを得やすい)
この自国通貨発行の裁量の問題は、今後のEU問題、特に貿易や観光で潤う地域にとっては死活問題だということに気がつかされました。
通貨の役割って面白い!
というわけで、エマニュエル・トッド、歴史学者の視点で見る経済解釈、大局で見てる感が面白いです。
グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命 (朝日新書)
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