イノウエさん好奇心blog(2018.3.1〜)

MachinoKid Research 「学習会」公式ブログ ゼロから始める「Humanitas/人文科学」研究

ういういしさ哲学

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自分は学士の学位なので、専門家とはいえないキャリアですけど、それでも、実践的と思える哲学に出会ったら、大学4年間の講義を参考に、文献紹介をしたいと思います。

ところが今回、あえて過去の自分の手記から、とあるエピソードを紹介することにしました。自分なり後から読み返してみて、初々しい哲学が、面白かったんです。

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当時、20代前半の自分。
所属して間もない事務所から、初めて海外ロケの撮影が舞い込んできた。
行き先は、パリとミラノだった。
それを聞いて浮き足立ったのも束の間、結局のところ、帰りの飛行機の中では、窓ガラスに腹をたてることになった。

空はくすんだように見えて景色も楽しめない。曇り空なのか、ガラスの方が汚れているのか、思った以上に視界が悪い。フライトアテンダントの仕事に若干、腹を立てた。そもそもFAが窓拭きの仕事を任されているのかは知らない。ただ気分は冴えなかった。その気持ちの発端は、実は、ある人との出会いにあった。

現地で同行したスタッフさんの一人、フリーのライターさんは初めて顔を合わせる人だったけれど、最初の挨拶の時には、すっかり見入ってしまった。艶やかで魅惑的な雰囲気を放っていたからだ。
どんな関係なのかは知らないけれど、クライアントの大手広告代理店、そこのディレクターさんと懇意の仲のようだった。
彼女は容姿端麗だけれど、なによりも色気がある人だった、それも男ウケする色気、俗にいうフェロモンの量が尋常じゃない人だった。なんとなく、気をとめるようになっていた。


初日
自分は新人カメラマンの立場。仕事に専念することだけを考えた。
この日、そのライターさんと知り合うことになる。

2日目
パリのホテルで、早くも自分は彼女から相談を受けていた。仕事の進め方とか、写真は縦位置に統一したほうが映える、とか、レイアウトに関してのことだった。

3日目
彼女が例のディレクターさんに呼ばれていた。
後から聞けば、現場の空気があまり良くないとのことだった。さらに、その現場を乱す原因の一端が、そのライターさんにあるかもしれない、とのことだった。たまたまその時、ホテルのロビーでいっしょにいた彼女は一言「いってくるね」と残して、ホテルの一室に向かった。その後ろ姿を今も覚えてる。
体のラインがなんというか肉欲感があって、その容姿を目にすると撮影対象の某女優さんでさえ霞んで見えた。

4日目
仕事の後、ホテルに戻ると電話が鳴った。ライターの彼女から相談がある、とのことだった。部屋に行くと、そこで悩みを打ちあけられた。
なんとなく想像していたことと大して変わらない、思った通りのはなしだった。
それよりも問題は、下着の透けてみえるシャツを着て、酒を勧めてくることだった。笑
素肌がより色っぽく見える。目がくらむ。

5日目
ミラノにロケ地は移動。
仕事内容は、某メイカーのワインカクテルを紹介していく旅で、女優さんが現地のスタイルで案内していくというもの。女性誌各社に同時にビジュアルを寄稿して、カクテルの流行を作り出すという流れだった。
赤文字系と言われる女性誌7、8社が、同時に記事を連動させる。すると読者はそれを流行だと錯覚するそうだ。"広告代理店らしい"面白みが詰まった仕事だった。

ところで、仕事後、ホテルの客室に戻ると電話が鳴った。その日、別の現場で取材を終えた彼女の話は、仕事のことだけでなく、とりとめがなかった。彼女の部屋へ行くと、彼女はパジャマ姿だった、素肌ばかりが気になり....ぼくは、完全に彼女に肩入れしていた。

6日目
その日、彼女は現場にも、他の現場にもいなかった。

7日目
ミラノに来てからは怒涛の仕事量だった。半ば浮かれそうになっていた自分には良い薬になった。クライアントの指示のまま、良い結果を出せた。彼女は一足先に帰国したと、話を聞いた。

8日目
帰りの飛行機の中では、後悔していた。
ミラノに移動した5日目の夜は不思議だった。ホテルの部屋の内線が鳴って、彼女の部屋に赴いて、そのままドアをノックして、言われるがまま中に入ったのだけど、そこには落ち込んだ表情の彼女が立っていた。顔を覗くと疲れが滲み出ていた。

単刀直入に要件を話してくれた。
例の広告代理店のディレクターの話だった。
「ヤツはわたしとヤりたくて迫ってくる」のだそうだ。そして彼女は困惑していた。
その日は、まるで違う一面をぼくに見せてきた。彼女の作ってる詩を聴かせてくれたり、iTunesで雑多な曲を聴いて感想を言い合ったりした。

それから、薄暗がりの中で流れに任せてソファに横になって、彼女も寄りかかってきた。結局のところ、一緒にベッドの上で横になった。
髪の毛が顔にかかって、近くにいるだけで溶けそうだった。酒も入っていたし火照った彼女の肌が変な湿度で触れ合ってきた。科学変化を起こしそうだった。そしてなにより、そのままどうにかなりそうだった。まだ会って5日しか経っていない二人が、同じベッドの上で寄り添っている。顔が近づいて頰が触れていた。
そのとき、こんな一言が口をついて出た。
「疲れてるみたいだし、だからといって、そのスキにつけ込むわけにいかないよ。」
と、僕は見栄を切ったのだ。そのあと、他愛のない話が続いて、いつのまにか彼女は眠っていた。

今は飛行機の中、思い出すとため息が出た。
機内の窓ガラスがさらに曇った。もともと、汚れていただけかもしれない。
フライトアテンダントに不満をぶつけながら、自分のプライドの浅はかさを思い知らされた。
もったいないことした。と、本音のため息がこぼれてた。

あんな美人はもう会えないだろう。
そう思うと、余計、視界が悪くなった。

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誰が得するわけじゃないですけど、若気の好奇心と浅い哲学でした。
何が言いたいのかというと、男をからかうな、ってことじゃなく、初々しさがあるって話です。
ちなみに、具体名、背景など、バレて迷惑になると嫌なので、多々変えてます。

来月は、学術系テーマにもどりたいと思います!